歯科医師国家試験合格率が低い理由

近年、歯科医師の国家試験合格率は6~7割台。2020年3月に発表された第113回歯科医師国家試験の結果は65.6%でした(受験者3211人に対して合格者数2107人)。同時に発表された医師試験の合格率が92.1%だったのと比較しても、歯科医師の国家試験はずいぶんと狭き門だと言えるでしょう。歯科医師国家試験も合格率9割前後という時代が長らく続いていたのですが、2014年に63.3%と過去最低となり、それ以降上がり下がりを繰り返していました。その背景にあるとされるのは、歯科医師を過剰とする将来予測とそれに基づく抑制策です。

少し経緯を溯ってみてみましょう。1960年代、日本は国民の3割が虫歯を抱える一方、65年ごろの歯科医師数は人口10万人あたり35人程度しかおらず歯科医師不足の状態でした。そこで69年に、国がこれを50人にするという目標を定めたのです。これを根拠として、歯学部・歯科大学の新セルも計画され、約1100人だった入学定員も10年で3500人台にまで広げ、目標を達成しました。その後も歯科医師の数は増え続け、現在では10万人を突破し、人口10万人あたり80人を超えてきているのです。

需要と供給のずれ

加えて、需要のミスマッチが顕在化しました。歯磨き剤へのフッ素配合や歯磨き習慣の定着により、虫歯は激減し歯科の患者数そのものが減少傾向にあるのです。国は87年から入学定員の20%削減目標を掲げ、98年には更に10%削減が求められました。しかし私立大など、大学経営という問題に直面し、結果的に追加10%削減は達成されず、入学定員による歯科医師数の抑制は果たせませんでした。

そうなると、出口となる国家試験で絞らざるを得なくなります。その結果、各大学に定員数削減を要請する一方、厚生労働省は国家試験による抑制策をとる事になったのでした。私立大では定員削減は進まないまま、多くの大学が入学志願者減少に見舞われ、定員割れも相次ぐようになりました。となると経営も鑑みて大学側は入学者の水準を下げざるを得ません。基礎学力の不足した学生が増え、結果として留年が増えたり、国家試験の合格率が下がるという負のスパイラル状態に陥ったと言えます。

また歯科医の数を増やす以外の観点で、歯科医院における人材不足を解決することも可能です。例えば近年では歯科レセコンが非常に発展を遂げています。使いやすい歯科レセコンを導入できれば、歯科における事務作業を軽減できることから、導入した、もしくは導入を検討している歯科医院も少なくありません。このような技術の発展は、今後も歯科医事情に影響を与えることでしょう。